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お客様からフェルナンド・ペソアの『ポルトガルの海』をお譲りいただきました。
ペソアは1888年にポルトガルのリスボンに生まれ、1935年にリスボンで死去しました。生前刊行された詩集は一冊だけで、死後に発見されたトランクの中から膨大な遺稿が見つかり、1980年代になってやっと彼の代表作『不安の書』などが刊行されました。
彼は生涯に七十二通りともいえる別名(異名)で書き続けため、「私の複数性・他者性」という観点で注目されましたが、そもそも固有の不変な人格・私という考え方こそ異常で、精神科医の中井久夫が翻訳し日本に紹介したアメリカの精神科医のハリー・スタック・サリヴァンの言う「人格は対人関係の数だけある」というほうが非常に自然な考え方ではないでしょうか。人間は固有の一つの人格だけでなく、ジキルとハイド氏のようにわかりやすく二つに分かれているわけでもなく、無数に「私」というのは存在し、あり続けていくのではないか。そういった世界観のなかでは「私らしさ」や「自分らしさ」という枠におさまっていこうとする既存の考えかたが窮屈で息苦しいものではないかと殊に最近感じます。
ペソアの文章にはじめて触れたのは、今福龍太や四方田犬彦が編纂した『世界文学のフロンティア5 私の謎』というアンソロジーの本の中でした。
その中の「やあ、羊飼い君」という詩です。
「やあ、羊飼い君、
道端にいるきみ、
吹きゆく風は君になんていう?」
「風です、吹いています、
以前にも吹きました、
これからも吹きます、とね
あんたにはなんていう?」
「それよりはずっといろんなことだよ、
他にもいろんなことを話してくれる。
さまざまな記憶やさびしい懐かしさ
かつて起こったことのないうあれやこれもや」
「あんたは風が吹くのを聞いたことがないね。
風はただ、風のことだけを話すんだ。
あんたが聞いたのは嘘ばかり、
そしてその嘘はあんたの中にある」
短い日本語訳でたった15行の詩ですが、この詩を読んだときに「そのまま飲みこむこと、投げだすこと」について考えさせられました。
次回に続きます。
タテ
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