久松文雄『スーパージェッター』朝日ソノラマ、1968年が入荷しました!~世紀を超えた犯罪者の「コロナ・ビーム」!?
先日、埼玉県伊奈町(本町)での即日出張買取にうかがわせていただきました。昭和40年代のSFビジュアルブック、サンリオSF文庫、ハヤカワポケミス、ハヤカワノベルズ、創元推理文庫、久保書店QTブックス、エドガー・ライス・バローズ等をお譲りいただきました!
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さて、今回は最近入荷しました、1960年代の絶版漫画を紹介いたします。歴史的な視点も取り入れつつ、現時点でどのような読み方ができるのかという点で、大変興味深い作品でした。
その前に、上記の歴史的な視点が何を意味するのか若干説明させてください。
新型コロナウィルスの感染拡大に直面して、私たちがこれまで当たり前だと思っていた生活のあり方や経済の仕組みなどを根本的に見直す必要が出てきています。ところで、私たちにとってなじみ深い生活様式や経済というのは、いつできあがったものでしょうか。それはについては、やはり高度経済成長を挟んだ1950年代から1970年代のインパクト抜きには語れません。あわせて、漫画というジャンルということであれば、ある時期までの漫画家には戦争体験の影響が色濃かったこともあわせて考える必要もあるかもしれません。この昭和の戦争も、日本の政治・経済・社会を激変させ、後の高度経済成長につながる「日本的」な制度(労使協調の企業別労働組合、年功序列や終身雇用、行政指導など)が準備されていきました。
見逃せないのは、戦争から高度成長にいたる日本社会の変化は、大きな歪みも伴うものであったことです。1964年11月に成立した佐藤栄作内閣は「社会開発」を掲げて、公害対策や住宅政策、そして広範な国土計画などを掲げ、高度成長の弊害の是正に努めました。そうした時代の作品であることを念頭におきつつ、今回紹介するのは以下の漫画になります。
TBSオリジナルアニメのコミカライズとして刊行された。久松文雄『スーパージェッター』(朝日ソノラマ、1968年)です。カバーのフリップには「タイムストッパーの切り札で、時間をとめたジェッターが、命を賭ける三十秒」と、同作品のコンセプトが示されています。30世紀からきた男タイムジェッターが、20世紀と30世紀の悪人を同時に敵に回して立ち回るというスリリングな作品となっています。ちなみに第1話の犯罪は銀行強盗でした。なんとも20世紀的な犯罪の光景に、未来のSFハイテク機器を織り交ぜるという形で、読者の時間の感覚が揺さぶられます。対するタイムジェッターは「時間を止める」という手法で立ちむかうというのも、面白い構図といえましょう。
正義のヒーローの必殺技が「時間を止める」ことで、しかもそれが生死を賭けた30秒であるということに忍ばされた、作者の意図はなんでしょうか。それを探っていくためには、戦争から高度成長を経た日本社会の激変を振り返ることが手がかりになると思います。
ところで、こんなワンシーンがありました。コロナ・ビームが引き起こすであろう変化を大局的には受け入れつつ、自分なりの「命を賭ける三十秒」に活路を見いだせ、というメッセージなのか、とふと感じました。
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小野坂
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