松村高夫、矢野久編著『裁判と歴史学――七三一細菌戦部隊を法廷からみる』(現代書館、2007年)が入荷しました!~新史料発見の報道によせて
先日、神奈川県小田原のお宅へ、即日出張買取でお伺いしました! 歴史、哲学、宗教、社会科学、自然科学、文学、美術書、学術書など大量のご書籍をお譲りいただき、その中には世界の名著(ソフトカバー版)、全集のセットもございました! ありがとうございます。
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さて、このところ、SNS上でも注目されている、近代日本史に関するニュースがございます。
第二次世界大戦中に細菌戦の研究や人体実験に手を染めていた、731部隊を本部とする旧関東軍防疫給水部(関防給)に関する新史料が発見された、と京都新聞が報じました。この問題を研究している滋賀医科大学名誉教授らが、戦後に政府が作成した731部隊の関防給に関する公文書を発見したというのです。滋賀医大名誉教授の西山勝夫氏は19日の京都教育文化センターでの記者会見で、自らが発見した公文書「関東軍防疫給水部部隊概況」(1950-51年作成)について解説しました。この文書によれば、731部隊の関防給の組織機構や支部の隊員の所属、敗戦前後の行動の一端が明らかになるとのことです。さらに、支部で細菌を生産していたことも公文書で初めて裏付けられたといいます。
※731部隊、詳細な隊員情報や組織機構が判明 70年前の公文書を新発見(京都新聞、2020年6月22日)
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/285364
そこで、最近くまねこ堂に入荷しました、以下の本を紹介したいと思います。
松村高夫、矢野久編著『裁判と歴史学――七三一細菌戦部隊を法廷からみる』(現代書館、2007年)です。カバー写真は現在の中国の黒竜江省ハルピン市平房区にある731部隊遺構。編著者の一人の松村高夫氏の撮影によるものです。
本書は、731部隊の人体実験や細菌戦をめぐる戦後補償裁判について、歴史学者と弁護士との共同作業で執筆されたものです。とりわけ、歴史学者による誠実な事実認定に基づいて弁護士が法律論を組み立て、さらに裁判の進行とともにさらなる事実究明に発展する、といった循環を作り出したことが、本書の価値を高めています。
たしかに、本書の731部隊に関する詳細な事実認定およびそれに基づく法律論は、この問題を直接の専門としていない限り、易しい内容であるとはいえません。しかし、731部隊の専門家でなくとも、歴史や裁判に多少なりとも関心がある向きには必読ともいうべき章があります。イギリス労働組合運動史・イギリス社会史を専門とする松村氏が本書第1章で提起している、歴史的事実との向き合い方には圧倒されます。松村氏は、文書による事実認定の厳密さを重視するとともに、文書に残りにくい人々の生活から目を逸らさないために、歴史研究それ自体の歴史に孕まれた問題を執拗に問うています。
なお、くまねこ堂では、松村高夫『イギリスの鉄道争議と裁判―タフ・ヴェイル判決の労働史』(ミネルヴァ書房、2005年)(https://amzn.to/2AO1yd6)を出品しています。あわせてご購入をご検討くだされば幸いです。
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小野坂
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