諏訪彰監修『図解 大地震がくる!――きみが生きのこるために』(少年少女講談社文庫、1974年)が入荷しました!
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2月13日に福島県沖で発生した地震の影響で、土砂崩れ、建物の倒壊が発生しています。さらに、この被害はスーパーマーケットの営業休止など、流通面にもおよび、被災者の方々の生活に打撃を与えています。
※イオン/地震の影響で福島県、宮城県5店3ショッピングセンター営業休止(流通ニュース、2021年2月15日)
https://www.ryutsuu.biz/store/n021511.html
東京電力福島第一原発の5、6号機については、使用済み核燃料プールから水があふれ出たと報道されています。今回の地震による事故の収束、そして10年前の東日本大震災以来の問題への対応など、依然として注視する必要があります。
※福島第一原発など東日本の原発「異常なし」原子力規制委 最大震度6強の福島県沖地震(東京新聞、2021年2月15日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/85832
ところで、くまねこ堂には、こんな本が入荷しました。
諏訪彰監修『図解 大地震がくる!――きみが生きのこるために』(少年少女講談社文庫、1974年)です。1974年刊行の書籍ですから、地震のメカニズムや、災害時の心構えなどの内容は、現在では常識となっているか、更新された部分も多いかもしれません。あるいはどぎついカラー口絵に、違和感を覚えるかもしれません。しかし、監修者の気象研究所地震火山研究部長・諏訪彰とはどういう人物なのか、軽い気持ちで略歴を確認してみたところ、意外にも興味深い書籍であることがわかりました。
本書の監修者である諏訪彰は、1919年に長野県諏訪郡に、諏訪氏の分家筋の家に生まれました。東京帝国大学理学部地質学科に進学し、1944年に卒業して兵役につきました。その任務は技術将校として日本海沿岸の石油調査でした。戦後は気象庁の前身である中央気象台において火山研究に従事し、1980年に定年退職しています。
※ 田中康裕「本会名誉会員 諏訪 彰さんの逝去を悼む」『火山』第44巻第2号(1999年4月) 109-110頁。
そんな戦時経験を持つ諏訪彰が、本書において次のように呼びかけている部分があります。
「震災対策のような一大難事業をなしとげるためには、まず為政者にそのつもりになってもらわなければなりません。そうはいっても、わたしたちも、すべてを政治の貧困のせいにして、自分たちは、なんのそなえもしないで、評論家気どりでいるわけにはいきません。天は、みずからをたすけるものをたすけるのです。」
かつて、日本政府・日本軍を信用した結果、国民はどのような被害を被ったでしょうか。震災対策を「日本の安全保障政策」ないし「軍部の統制」に置き換えた場合、諏訪の訴えが急に生々しく思えてきませんか? 諏訪は「『いざ』というときにも、みんながたすけあう気持ちをつねにもっていられるように、ふだんから、人と人との信頼関係をそだてておくほかありません」とも述べています。もしかすると、そのような信頼関係の大切さを実感するような過酷な体験を、戦時中の諏訪自身がしていたのかもしれません。
諏訪自身の戦時体験の背景を想像しながら本書を読んでいくと、政治に頼ることを戒め、日頃からの信頼関係の構築を説いて災害時の生存策に大部分の紙幅を割き、地震の予知は困難であることを明言しているところなどは、子供向けの自然科学本にしては妙に現実主義的な印象を受けます。基本的にはシュールな絵が展開されている本書ですが、上記のような真剣で実直な主張が挿入されていることに気づくと、大変印象が変わります。
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小野坂