1939年8月9日の『軍港毎日新聞』~戦時期日本の飲食店の営業時間規制など
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以前のブログで昭和戦中期の新聞を紹介したことがあります。その際は、現在の大手新聞社の戦時期の報道という形でお伝えしました(※)。ところが今回、あまり目にすることのない、地方紙の現物を入手いたしましたので、それを取り上げていきたいと思います。
※昭和戦中期の新聞を読み解くための書籍を紹介します(くまねこ堂古書ブログ、2021年1月16日)
https://www.kumanekodou.com/26369/
こちらは、1939年8月9日の『軍港毎日新聞』第4612号です。発行社の軍港毎日新聞は、神奈川県横須賀市に存在した新聞社で、最上尭雅という人物を代表者としていたようです。同新聞社に関する情報は、ネット検索でも容易にひっかからず、題字の下の欄の記載事項以上の詳細は、今のところわかりません。題字によれば、同社・同紙の前身は相陽時事新聞社・『相陽時事』ということのようですが、こちらの詳細もよくわかっていません。
さて、1939年8月9日の記事なのですが、「深夜の酒を取締 夜の営業を縮少」、と飲食店の営業時間を制限する神奈川県保安課の動きについて報じられています。神奈川県保安課は、中央政府の国策の国民精神総動員運動に沿って、料理店飲食店取締規則の強化を目指していますが、このことは既存の商店法との矛盾があると同記事は指摘します。それに続く内容も興味深いものがあります。料理店飲食店取締規則と商店法との矛盾は神奈川県保安課にしても否定できなかったようで、当局は飲食店に対する規制ではなくて、泥酔者に対する規制という説明で押し切ろうとするのです。したがってこの記事は、「深夜の酒を取締」を建前としつつ、商店法を迂回して「夜の営業を縮少」という目的を果たそうとした、神奈川県保安課の窮余の策を簡潔に報じたものであるといえます。神奈川県保安課による、中央政府が推進する国民精神総動員運動への忖度がそこにはなかったのかどうか、気になるところです。
他にも、赤痢拡大に苛立つ記事や、詐欺事件の多発に際して一般市民が警察に協力するように説く記事、国家財政を支えるために郵便貯金を奨励する記事など、当時の雰囲気を感じさせる記事が多数含まれています。それぞれ、戦時期の公衆衛生、治安行政と監視社会、財政と貯蓄といった重要な研究テーマに入口になり得るような記事です。怖ろしいことに、「戦時期の~」を「現代の~」と入れ替えてみても、重大な問題であることがわかります。
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小野坂