マルセル・ジュノー『ドクター・ジュノーの戦い――エチオピアの毒ガスから広島の原爆まで(新装版)』丸山幹正訳(勁草書房、2014年)が入荷しました~「黒い雨訴訟」原告勝訴を受けて
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8月に入りますと、アジア・太平洋戦争を振り返る報道を目にすることが多くなってきます。そんな中、単なる年中行事(あるいはカレンダー記事)ではないニュースがありました。いわゆる「黒い雨訴訟」で原告住民が勝訴したという知らせです。
「黒い雨」とは、1945年8月6日の広島原爆投下によって発生した放射性微粒子やススなどを含んでしまった雨のことです。原告の広島県住民は、この「黒い雨」で生じた健康被害の補償を受けるために、広島県と広島市に対して被爆者健康手帳の交付を求め、提訴しました。2審での広島高等裁判所判決は、原告全員を被爆者と認める内容で、原告の勝訴となりました。一時、政府が広島県および広島市に対して上告するよう働きかけたとの報道がありましたが、菅首相が26日に上告の断念を発表しました。今後は、この判決、そして判決後にみられた政府の上記の動きなどの経緯をふまえつつ、被爆者の方々への真摯な支援が国よって果たされるよう注視する必要があります。
※黒い雨訴訟、首相が上告見送り表明「被爆者手帳を交付」(朝日新聞、20210726)
https://www.asahi.com/articles/ASP7V5K1KP7VUTFK00Z.html
そんな中、くまねこ堂には、以下の本が入荷しました。
マルセル・ジュノー『ドクター・ジュノーの戦い――エチオピアの毒ガスから広島の原爆まで(新装版)』丸山幹正訳(勁草書房、2014年、原書初出1947年)です。著者のマルセル・ジュノー(1904-1961)はスイス出身の医師で赤十字国際委員会の派遣員として、イタリアとエチオピア間の紛争(伊エ紛争)、スペイン内戦、第二次世界大戦、敗戦後の日本といった数々の戦地、占領地で人道支援に従事した人物です。帯にあるように「毒ガスも原爆も国際法違反である」とジュノー博士がいうとき、毒ガスはエチオピアで、原爆は広島で直接目の当たりにした現実について述べていることを意味しています。
私がジュノー博士のことを知ったのは、スイス・ジュネーブの国際赤十字博物館でのことでした。上記の画像は、1951年初版の英語版を1982年に赤十字版に改版し、広く頒布したものです。世界を渡り歩いたジュノー博士の足跡は、万国共通の遺産に違いありません。原典のフランス語、英訳、日本語訳のいずれか、あるいは対照させながら、戦争の本当の姿に向き合ったジュノー博士に思いをはせる夏にしたいものです。既存の「8月ジャーナリズム」に振り回されることなく、自分なりに考えるヒントをつかむために、ジュノー博士のような自分なりに生き抜いた人物の回顧録をお勧めします!
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小野坂