三島由紀夫とメディア

三島由紀夫とメディア

皆様いかがお過ごしでしょうか。コトーです。

本日は、三島由紀夫についてお話してみたいと思います。私、三島についての知識がほぼない中ですが、お付き合いくださいましたら幸いです。

三島というと、皆様どのようなイメージをお持ちでしょうか。現代においては、『金閣寺』や『豊饒の海』の作者であるといった、文学者としての顔が想起されやすいかもしれません。

しかし、三島は、民兵組織「楯の会」を結成する、自衛隊に体験入隊する、また全共闘との公開討論に出向くなど、様々な行動をし、自らも行動家たらんとしていました。

その究極として、彼は1970年に、自衛隊市ヶ谷駐屯地で改憲のための決起を促した後に自決しています。

当時を生きていた人々にとっては、かなりの衝撃だったでしょう。この度、その死の直後の新聞・雑誌を多数お譲りいただく機会があり、それを実感しました。

週刊誌において三島の特集で別冊が組まれており、それが何冊もありました。たくさんの新聞も、一面で大きく扱っています。

今、ある作家が亡くなっても、その作家について同時複数の雑誌で、新聞で、このように大きく報道されることは想像できません。三島の影響力の大きさを感じます。

しかし、今回、当時の記事の数々を見て、三島はただ報道されるような受身であったのではなく、むしろメディアを利用しようとしていたとも言えるように思いました。

三島 雑誌

例えば、雑誌の写真。三島の生前のものが使われていますが、三島は肌を露出しポーズをとり、肉体美を披露しているものも多いです。載せた写真ですと、サンデー毎日と週刊現代の表紙はそのようなものですね。

またその下の週刊読売の表紙は、黒い背景に三島の顔が浮かぶように工夫して撮られています。

ここで注目したいのは、そのような写真は、道を歩いていて不意に撮られた写真などではないということです。三島は、写真を撮られていますが、肉体を鍛えてそれが映えるような服装をするなど準備をし、むしろメディアに見せたい自分を撮らせているとも言えます。そうして、雑誌の読者に、自分の意図する三島像を印象付けています。

三島 新聞

また、新聞の報道を見ると、三島の自決について「憂国」を想起していることがわかります。ブログに載せた新聞の写真では、奥のデイリースポーツに、「なまなましく『憂国』シーン地でいく」という見出しがあります。

「憂国」は、三島の小説が原作となっている映画で、三島が監督・主演して1966年に公開されました。二・二六事件を題材として、親友を討たねばならなくなった陸軍中尉が苦悩し、妻と心中するという筋です。そこでの生々しい切腹シーンは、人々の記憶に残りました。

重要なのは、「憂国」では、芸術として、その夫婦の死を描いているということです。能舞台に見立てられた美術セット、流れるワーグナーの音楽の中で、凄惨な死は美に昇華します。

「憂国」は三島が監督・主演をつとめ評判になった映画でした。ですので、三島は、自らが実際に切腹をして死ぬことで、人々が「憂国」を連想することは容易に想像できたでしょう。「憂国」と関連づけて、自分の死が報道されることも想定していたでしょう。

芸術として死を扱った映画と同じような形で実際に死ぬことで、三島は自分の死が、自身の美学であることを、人々に示そうとしました。そして、実際に、その死は、「憂国」と同様の死に方だ、などといった形で報道されました。

戦後、民主主義国家となり、戦前のような形の国家と人々との結びつきがなくなる中で、日本に生きる人々は、ある意味では自分の拠り所を失いました。国家に代わる、自分を説明するものが必要となったのです。

三島は、最終的に国家に近づき、反時代的だとされました。国家を自分の拠り所としようとしても、戦後は、戦前と違い、国家がそのようなあり方を保証することはありません。ですから、何とも脆い拠り所でしかないのです。

そのような中で、三島は、メディアをうまく利用しようとしたのではないでしょうか。何かから保証された、確固たる自分が見つけられなくとも、見せたい自分をメディアに見せることで、メディアが三島像を作ってくれるのです。見せたい自分を見せれば、三島はそういう人だとして、メディアは人々に示してくれるのです。

そのような振る舞いを続ければ、見せたい自分と本当の自分の境も、わからなくなってくるでしょう、そもそも誰も本当の自分など持っていないのですから。

メディアを意識しつつ、三島は自分の美学を構築し、自決しました。しかしどんなに美化しても、死は死です。

三島の芸術の行き着く先は死だった、そこに悲哀を感じます。

コトー

このブログを書くために、以下のものを参考にしました。

三島由紀夫文学館「三島由紀夫の年譜」https://www.mishimayukio.jp/history.html

新潮社『花ざかりの森・憂国」解説 https://www.shinchosha.co.jp/book/105041/

映画.com「憂国」解説 https://eiga.com/movie/41518/

東京新聞「三島由紀夫没後50年 楯の会1期生、元編集者…ゆかりの人々を訪ねて」2020年11月25日 17時52分 https://www.tokyo-np.co.jp/article/70374


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商品名・作品名 三島由紀夫

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