木村汎『プーチンとロシア人』(産経NF文庫、2020年)を紹介します。#ウクライナ #クリミア #ロシア史
ロシアのウクライナ侵攻が、長期化の様相を呈しつつあります。また、戦線は地理的な意味でも拡大する一方で、ウクライナ西部での戦闘は、ポーランド国境近くにまでおよんでいるとの報道も出ています(※)。
※ウクライナ西部に攻撃、35人死亡 ポーランド国境近く(日本経済新聞、2022年3月13日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB131DC0T10C22A3000000/
日々のニュースをながめていると、不安ばかり募ります。不安だから一体何が起きているのか、どうしてそうなったのか知りたいと思うわけですが、知れば知るほど恐ろしくなるかもしれません。とはいえ、漠然と不安になっているよりは、具体的に何がコワいのか多少なりとも知っている方がマシだという構えで、ニュースや歴史の本を読んでいくより仕方がないのではないでしょうか。
そこで、下記の本を紹介します。
木村汎『プーチンとロシア人』(産経NF文庫、2020年)です。本書はロシアの政治指導者プーチンがどのような人間なのか、そして同時にプーチンを生んだロシアとは、ロシア人とは何なのかを論じたものです。目次を一見して気づくのは、単なるプーチンの評伝でもなければ、ロシア史の概説でもないという本書の構成です。著者の木村氏は、上記の課題に応えるために、重要なトピックごとの章に分けて論じていきます。とりわけ、「外交」、「軍事」とは別に「交渉」の章が設けられているのは、著者の人間性、そして国民性に注目するアプローチが表れているように思われます。
とはいえ、一政治指導者について、「かくかくしかじかの性格を持つ」と論評するのはともかくとしても、「○○人は~~な国民性を持つ」と述べるときは、安易なレッテル貼りとならないよう注意する必要があります。けれでも一方で、日本人とロシア人の感覚が、その生まれ育ち、そして一生を超えた歴史的な背景ゆえに、相当異なったものとなっている面があるのも事実です。したがって、国民性についての議論を、「単なるレッテル貼りでは?」と忌避せずに、それと向き合ってみる必要があります。
たとえば日本人は、国境、民族、言語が一致したものだと考えがちです。しかし、実際に世界を見渡してみると、一国内に複数の民族が存在し、日常的に複数の言語を使用している国は珍しくありません。むしろ、そうした意味では、日本の方が世界においては珍しい存在であって、私たちの思い込みは常識ではないのです。場合によっては、私たちの思い込みは私たち自身の事実と相反することもあるでしょう。
そうした私たちの思い込みを相対化し、可能な限り私たちの認識を変えていくために、プーチンとはどんな人物か、ロシア人の国民性と何ぞや?ということを知るために、木村氏の『プーチンとロシア人』を読んでみてはいかがでしょうか。
なお、旧ソ連の安全保障について、下記の本を出品しています。下記リンクよりご覧ください。
アメリカ合衆国広報庁、 アメリカ合衆国文化交換局『ソ連とその衛星国〈第1〉東中欧におけるソ連の植民主義―資料』(米国大使館USIS、1957年)
https://amzn.to/3u18JpU
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小野坂