渡邊洋之『捕鯨問題の歴史社会学――近現代日本におけるクジラと人間』(東信堂、2006年)~日本の「伝統」と実際の歴史
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今回は、最近入荷した下記の書籍を紹介していきます。
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渡邊洋之『捕鯨問題の歴史社会学――近現代日本におけるクジラと人間』(東信堂、2006年)です。同書は、アマゾン商品ページの紹介文によりますと、現在の捕鯨問題をめぐる「国家間対立構造打破の突破口」を求めるべく、日本の商業捕鯨について「詳細な歴史的分析に基づき、近現代日本人の経験と記憶に彩られた捕鯨観を相対化」した研究です。本書の問いである、商業捕鯨は「はたして日本文化の伝統か?」という点について著者は、下記のように指摘しています。
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これまで見てきた、近代の日本捕鯨業における技術の導入過程について、あきらかになったことをまとめてみる。まず、ノルウェー式・母船式の捕鯨の両方とも、新たな記述を導入する際に、その担い手としてのノルウェー人を会社で雇用するというかたちをとっていることがわかる。次に言えることは、朝鮮半島においてのノルウェー式捕鯨の開始や、母船捕鯨導入期の「国策」のための鯨油生産というように、捕鯨の新たな技術の導入期と、戦前の日本の拡張主義的な方向性との結び付きである(同書50-51頁)。
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▲同書i頁
つまり、日本の捕鯨とは、ノルウェーの技術を輸入したものであり、「国策」とされた捕鯨を現場で支えたのは、朝鮮人労働者だったというのです。「近代の日本の捕鯨会社による捕鯨は、『日本人』のみによってなされたものではなかった」というこの指摘を受け、「伝統」と呼ばれるものの歴史が、本当のところどうだったのか?と問うことの重要さを再認識させられました。
小野坂