土地を語ることー「街道の日本史24 越後平野・佐渡と北国浜街道」ご紹介ー
朝夜の気温差に、季節の移ろいを感じます。
皆さまお元気でお過ごしでしょうか🍇
このような寒暖の差を感じる時、また少し穏やかになった陽の中でイチョウがはらはら落ちていく時、東京の秋だなあと思います。日本海の近くで育った私にとっては、ひたすら曇って灰色く、夏を過ぎ酷薄さを示しつつある風が松林をぞっとするような音で吹き抜けていくのが、秋でした。
小学1年生の時に、天気予報で東京の中継が流れた時に、「なぜこちらはいつも曇っているのに、東京はずっと晴れているの」と祖父に聞いた覚えがあります。聞かれて祖父は笑ったような気がしますが、彼が何と答えたかは記憶に残っていません。
安吾は「日本文化私観」で「タウトによれば日本に於ける最も俗悪な都市だという新潟市に僕は生れ、彼の蔑さげすみ嫌うところの上野から銀座への街、ネオン・サインを僕は愛す。」と述べていますが、この言葉に出会った時には、そうそう、自分も安吾と同じ景色を見てきたのだという感慨を持ちました。自分は今は電飾に顔を照らされつつ上野のアメ横を通り抜けながら、茫漠とした故郷の街を思いやるような生活です。故郷は遠い。
私的な話となってしまいましたが、本があれば、心をそんな遠くの故郷に寄せることができるかもしれません。今日は以下の本をご紹介します。
池亨・原直史編「街道の日本史24 越後平野・佐渡と北国浜街道」(吉川弘文館・2005年)です。
大和政権が渟足柵・磐舟柵を置いた頃の話から近代の労働争議まで、1冊で読めます。ある土地の長い歴史を、このような一般にも向けた本にまとめる時には、何を選びどう書くのかが問われるでしょう。編者の池氏も新潟出身ということですが(あとがきp.249)、この1冊でどのような新潟を描きだしたのか、興味深いです。
例えば私が今話したような新潟とも違うだろうし、安吾が語る新潟とも異なるでしょう。
旅をして実際にどこかに行くことも楽しいです。でもこのようなある地域について語られた本を読んでみることで、自分の知らないその土地の一面を知ったり、自分の思うその土地とその語られた姿との相違を考えてみるのも、面白いかもしれません。様々な人がどうその地を語るのか、比べてみるのも発見がありそうです。ある地域も、語られることで、それが積み重なっていくことで、作られていくのでしょう。そういう感覚を味わうのも、言葉が走りがちな現在大事なのかもしれません。
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本日もお読みくださりありがとうございました。
コトー
参考:坂口安吾「日本文化私観」(青空文庫)https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/42625_21289.html
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