言葉で世界と関わることー「ザベリオ」(大口玲子歌集・2019年・青磁社)のご紹介ー
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街のイルミネーションが華やかな今日この頃です。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。
本日は以下の本を紹介したいと思います。「ザベリオ」(大口玲子歌集・2019年・青磁社)。
めくってみて目に留まった数首を紹介したいと思います。
ソーラーカー小さきを組み立て子は冬のひかり丹念に集めてゐたり(p143「肉まんあんまん」より)
「冬のひかり」は、今の時期、外に出ると感じられますね。夏の陽射しとは違った、やわらかさを持っています。ひかりを集めるという言葉、どこか幻想的な感じも漂わせるものに、ソーラーカーという機械を合わせてくるのが素敵です。このような組み合わせもあったのか、と思わせる。その違う雰囲気の二つの言葉が出会い、美しい世界を作ることができているのは、ひかりを集めているのが子であることと、その子の「丹念」さが示されているからでしょう。邪心なく、一つのことを大事に行うこと、大人ではそれはなかなかできない。「子」は歌い手にとっては我が子であるかもしれません。そうだとするなら、親が子に注ぐ愛の眼差しも、この歌は纏うのでしょう。
空から降り注ぐ「ひかり」という、あまりにたくさんで溢れるようなものを、「子」が「小さき」ソーラーカーで「丹念に」集めるという、広大さと小さく繊細なものを対比させるような仕方も、巧みです。
冬の昼間、仕事の合間にこのような歌を思い出したなら、やさしい気持ちにもなれるかもしれない。
この歌集には、このような親子の生活が感じられるような歌と共に、現在を生きていく中での作者の心内を伝えるようなものも含まれています。
安室奈美恵の隣に翁長知事痩せて立てりけり「津梁」の文字を負ひ(p144「津梁」より)
以下は私がこの歌集をめくりながら思ったことでしかありませんが、家庭で起こることも世の中のことも、作者は言葉にしたいのでしょう。どれも作者にとって大事なことだから。分けて考えるとかではなく、どれも切実なのです。遠いところで起こっている無関係なことでは有り得ない。作者は言葉にして、関わっていく。そして祈っていく。
言葉にすること、それは世界と関わること。しかし、言葉というものの、本質的な不十分さに思い至ることもあるのでしょう。人間は言葉でしか世界と関われない、その悲しみ、やるせなさ。
雨 わたしはわたしの言葉をへらしたい。ただ濡れてゐるひるがほの前で(p146「津梁」より)
しかしそのような在り方を悲しく思おうとも、人間は言葉から解放されて存在することはできない。いつまでも言葉で闘っていくしかない。自分の身近なことにも、世の中のことにも。喜びにも、苦しみにも。言葉を頼りに人間は存在していくしかない。
この歌集の歌に触れ、改めてそのようなことを今日は思いました。
歌集という形で通して歌を読んでいくと、文脈が生まれ、一首だけの時には思い至らなかったことに気づけます。歌一首毎には様々な媒体で調べても出会えるかもしれませんが、このように本として手にして、歌集で読んでみるのもまた良いのではないでしょうか。
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コトー
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