意外と親しみやすい和歌ー「新編日本古典文学全集11 古今和歌集」ご紹介ー
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お正月は街を行く人も何となく幸福そうで、ゆったりした空気の中、世界も捨てたもんじゃないのかもしれないと思えるような気がします。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。
本日は以下の書籍をご紹介したいと思います。小沢正夫・松田成穂・校注訳「新編日本古典文学全集11 古今和歌集」(小学館・1994年)
和歌なんて難しそう、という方もいらっしゃるかもしれませんが、新編日本古典文学全集には現代語訳も注もあるので大丈夫です!
そして現代の私たちも、やはり和歌には感動しちゃうはずです。教科書でも読んだことがあるかもしれません、古今集仮名序にも以下のようにあります。(以下、現代語訳を含めた引用は全て「新編日本古典文学全集11 古今和歌集」による)
力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ、男女の中をも和らげ、
猛き武士の心をも慰むるは歌なり。
力ひとつ入れないで天地の神々の心を動かし、目に見えないあの世の人の霊魂を感激させ、男
女の間に親密の度を加え、いかつい武人の心さえもなごやかにするのが歌であります。
神や霊魂にさえも響くものは、どれほど時が経とうとも人間を感動させ続けるのでしょう。
実際に古今集から少し歌を紹介してみます。まず以下の歌。
雪の降りけるをよみける 清原深養父
冬ながら空より花の散りくるは雲のあなたは春にやあるらむ(巻第六・冬歌・330)
雪が降っているのを見て詠んだ歌 清原深養父
冬なのに空から花が降ってくるよ。そうすると、雲の向こうはもう春なのであろうよ。
今の季節にぴったりですね。
地にいる人間が雪を見て、それが降ってくる空に思いをやる。雪を花びらに見立てることで、雪から直接感じられる冬ではなく待ち遠しい春に心を向ける。
説明するとくどくなってしまいますが、この表現の巧みさと豊かさは1100年以上を経た私たちをも感動させるものです。
またこんな歌はどうでしょう。
読人しらず
五月まつ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする(古今集巻第三・夏歌・139)
読人しらず
五月を待っている橘が咲いて、その花の香りをかぐと、昔親しかったあの人の袖の香りが思い
だされ、とても懐かしい気分に誘われるよ。
ようやく咲いた橘の花、その香りをかぐと昔親しかったあの人を思い出す、橘の香りとあの人の袖に焚き染めた香の匂いが似ているから、という歌です。昔親しかった人というのは、恋人関係であった人ということになります。袖の香りを知っているほど、近くで寄り添った過去があるということを示しているからです。
この歌は平安時代とても愛され、「橘」という言葉は取りも直さずこの歌を想起させ、「以前愛した人を思い出す」という文脈まで示す、というような文化的な共有がなされていました。
いやいや、どこかで聞いたことありませんか、この感じ。2020年に流行しました、あの曲に似ていませんか。
そう瑛人「香水」です。君のドルチェ&ガッバーナの香水の匂いをかぐと、君と恋人であった過去が思い出される…。私たちは2020年頃、「香水」とか「ドルチェ&ガッバーナ」という言葉を聞くとすぐに瑛人「香水」の歌が頭の中に流れたし、その言葉だけで、他者に「昔の恋人と会ったところ、その香水の匂いによってその人との恋愛を思い出す」というあの歌でうたわれた内容を共有することができました。
厳密に言えば、橘の歌は、橘の花の香りをかぐことで不在の相手に思いを馳せている一方、瑛人「香水」では元恋人は隣にいて、その人の匂いを直接感じることによって過去を思い出している、という違いはあります。まあでも、やっぱり似ていると言えば似ているでしょう。「橘」と「香水」「ドルチェ&ガッバーナ」の文化的共有の仕方も、相変わらずなところはあります。
この島では1100年以上が経っても、同じようなことが感動され、それが共有されているのだと思うと、何だか感慨深い。こんなに長い時間が経っても、通じる感性があるなんて。何て根強い。
このように現代の私たちと似た感受性を見出すと、ぐっと和歌も親しみやすくなるのではないでしょうか。ご興味を持った方、例えば現代語訳もついている「新編日本古典文学全集11 古今和歌集」で和歌の世界に触れてみるのも良いかもしれませんね。
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本日もお読みくださりありがとうございました。
コトー
参考
瑛人公式サイト「BIOGRAPHY」https://eitoofficial.com/profiles
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