藤原辰史『トラクターの世界史――人類の歴史を変えた『鉄の馬』たち』(中公新書、2017年)が入荷しました!
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今回は、最近入荷した以下の書籍との関連で、過去の投稿を振り返ってみたいと思います。
藤原辰史『トラクターの世界史――人類の歴史を変えた『鉄の馬』たち』(中公新書、2017年)です。著者の藤原氏は京都大学人文科学研究所准教授で、20世紀の食と農の歴史を専門に研究されておられます。本書は、農耕機械のトラクターの歴史を扱うことで、農業における計画化、そのことが環境に与えた影響、といった20世紀全体の傾向を捉える視座を提供しています。
以前このブログでは、アレクサンドル・チャヤーノフ『農民ユートピア国旅行記』和田春樹・和田あき子訳(平凡社、2013年)を取り上げ、ソ連の農業経済学者チャヤーノフの農業協同組合論における、「小農経営の環境社会主義」と思しき要素を紹介することを試みました。
※アレクサンドル・チャヤーノフ『農民ユートピア国旅行記』和田春樹・和田あき子訳(平凡社、2013年)が入荷しました~忘れられた「小農経営の環境社会主義」(くまねこ堂古書ブログ、2022年7月7日)
https://www.kumanekodou.com/30274/
1920年代ソ連の農業経営論は今日振り返って興味深い理論が存在します。他方で、現実の歴史は、1930年代以降に定着したスターリン体制での農業集団化と農工分離といった大規模な計画化とその挫折であったように思われます。性急な計画は、結局のところ食糧生産の低迷と飢餓を招いてしまいました。
▲それ以前の小規模農業経営論との対照的な、農業集団化の現実
それなら、成功した計画的な農業経営の場合なら問題ないのでしょうか。この場合は1920年代アメリカの例ですが、生産力の向上に伴って、市場経済の面では過剰生産による農産物価格の急落、自然に対しては深刻な環境破壊につながりました。農産物価格が下落し農家の収入が減少すると、都市の工場で製造された製品を農村で売ることが難しくなります。こうして農村と都市をまたいで不況が広まり、アメリカの株式市場暴落をきっかけに世界全体に大不況が広まったのが、1929年の世界大恐慌です。
こうした市場経済における大恐慌の原因や、人間の経済活動が環境に与える問題を探究した人物として圧倒的な地位を占め、今日あらためて注目されているのが、『資本論』の著者カール・マルクスです。マルクスについては、下記の投稿がございます。
※斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社、2020年)が入荷しました(くまねこ堂古書ブログ、2022年11月3日)
https://www.kumanekodou.com/31518/
マルクスは『資本論』の最初の部分で「商品」という概念を詳しく検討しています。そうしたマルクスの「商品」へのこだわりを継承し、「擬制商品」という概念を打ち立てたのがカール・ポランニーです。「擬制商品」とは、本来商品でないものを商品として売買の対象とするという事態に含まれる「市場経済の極度の人為性の根源」を抉り出す探究から生まれた概念です。ポランニーについても、訳書入荷に際しての下記の投稿をご覧ください。
※カール・ポランニー(Karl Polanyi)の著書が入荷しました!~『大転換』から『人間の経済』へ(くまねこ堂古書ブログ、2022年5月13日)
https://www.kumanekodou.com/29533/
一冊ごとそれぞれに詳しくふれたいことが多いのですが、その一方で、これまで紹介してきた本の関係性についてもお伝えしていきたいと考えています。本年も何卒宜しくお願い致します。
小野坂