金城哲夫『ノンマルトの使者――金城哲夫シナリオ傑作集』(朝日ソノラマ、1984年)が入荷しました
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ウルトラセブンの展覧会が、6月23日から東京の池袋PARCO本館7Fで開催されています。2022年に放送55周年を迎えたウルトラセブンに再度注目が集まっています。
ところで、最近、次の本が入荷しました。
・ウルトラセブン第42話
金城哲夫『ノンマルトの使者――金城哲夫シナリオ傑作集』(朝日ソノラマ、1984年)です。著者の金城哲夫氏は、ウルトラシリーズの基礎を築いた脚本家として知られています。金城氏の手がけた作品には、差別や戦争責任の問題に切り込んだものが数多く存在します。そのなかでも、現在の地球人以前に地球に存在した人類「ノンマルト」との海底での戦いが描かれた、ウルトラセブン第42話「ノンマルトの使者」は、金城氏が沖縄出身であることと関係があるのかどうか、といったことが話題になることもあります。金城氏自身の沖縄戦の経験が、その後の脚本家人生に全く関係がないとは思えませんが、他方で創作で扱えるような体験であったのだろうか、という意見ももっともなことです。実際、後者のほうが、金城氏周辺のスタッフの見解として公表されることが多いようです。
「ノンマルト」の上記のような設定はすなわち、現在の地球人は「ノンマルト」を侵略して地球人となったということを意味しています。現在の地球人に追いやられた「ノンマルト」は海底人となっていました。こうした部分に、日本本土と琉球・沖縄との関係を投影する視聴者が多いのは不自然ではありません。しかしながら、金城氏とともに作品をつくり上げた方々にしてみれば、そうした単純な二重写しの作品だとは思えないということなのでしょう。いずれにしても、金城氏の真意について断言することはもはやできません。
・「海底の邪魔者」?
反対に、脚本家の真意を詮索するよりも、視聴した自分自身に対し、なぜ、あのシーンをずっと覚えているのだろう、と矛先を向けてみるとどうでしょうか。私にとってそういったシーンにあたるのが、「ノンマルト」に対し、「海底の邪魔者」呼ばわりを含め異様なほどの攻撃姿勢をみせたキリヤマ・ウルトラ警備隊隊長の様子です。この場面の映像作品でのセリフは、手元の脚本集そのままだったように思います。それが、下記です。
キリヤマ「ウルトラ警備隊全員に告ぐ! ノンマルトの海底基地は完全に粉砕した。われわれの勝利だ! 海底もわれわれのものだ!」
と、毎週出てくる宇宙からの侵略者さながらのセリフだったのです。しかも、このセリフはキリヤマ隊長のひきつった笑みとセットでした。まずもって、地球防衛軍・ウルトラ警備隊の場合、そういった血気盛んなセリフは、射撃の名人ソガ隊員や、怪力男のフルハシ隊員の吐くものだとばかり思っていました。それに加えて、キリヤマ隊長は、この場面で笑っているのです。ソガ隊員やフルハシ隊員が乱暴な言動をすることはあっても、彼らは猟奇的ではありません。
脚本を確認してみると、キリヤマの異様な勝利宣言の前に、彼の心中が明記されています。映像作品でこのシーンをみると、あっけにとられて通り過ぎてしまいますが、脚本では時が止まるような緊迫感があります。
・「ウルトラ警備隊のバカ!!」
キリヤマ隊長は、後の作品である平成ウルトラセブンで、人類のルーツについて調べていたと語られます。しかし、キリヤマ本人の登場は(俳優の中山昭二氏が撮影直前に亡くなっていたため)ありませんでした。初見では、ノンマルトの真実について嗅ぎまわっていたキリヤマが、地球防衛軍の誰かに●されたのだと思ってしまいました(作中ではおそらく曖昧に描かれていたはずです)。こういう所業をやってのける地球人は、やはり侵略者アース星人だろうと、私は固く信じていたわけです。
実際、人類の歴史には、侵略者が歴史を改ざんする、といった実例があります。それも現在からあまり遠くない時代のことで、現在にまで尾を引いている問題もあります。そういった史実に関連する書籍が入荷しましたら、この場で紹介しようと考えています。
小野坂
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