アフロ・ディズニー/菊地成孔・大谷能生(文藝春秋)

こんにちは 皆さま いかがお過ごしでしょうか。
昨日電車で風船を3つ掲げている人を見ました テーマパークらしいものではなく普通の原色の風船です。見たと言っても車窓に反射して写っているものを眺めていただけなので、それは映像のように思いました。最寄り駅のアナウンスで現実に引き戻されて 降りるとき私を押しのけるようにして横切る人がいました。その人はカレーを小さいポリ袋にいれて頭の上にのせていました。カレーがタプタプとしているのを見て風船男が確かにいたのだと実感が湧いてきました。

さて 暑いですが、今日も入荷した本を紹介します。

「アフロ・ディズニー/菊地成孔・大谷能生(文藝春秋)」です。

菊地と大谷がうけもっていた慶應義塾大学での講義の講義録です。今はもうやっていないようですが、当時は慶應だけでなく東京大学や国立音楽大学でも講義があったようです。

敢えてタイトルに内容を謳わなかったので、前書きだけ読んで先に進もうか判断するタイプの方にサーヴィスするが、この本は映画の講義録でも、オタク論の講義録でも、黒人音楽の講義録でもない(「オタク=黒人」というみたては一瞬出てくる)。だったら帯にでも書いておけよという話なのだが、この本が情報として紹介される場合、「視聴覚の分断/再統合という現象と発達学を結びつけ、20世紀を俯瞰する。という構えで行われた、軽狂の人文(疑似)科学講義」という事にでも成るかも知れない。(本文より)

どういった講義であったのか、菊地の前書を引用すると「視聴覚の分断/再統合という現象と発達学を結びつけ、20世紀を俯瞰する。という構えで行われた、軽狂の人文(疑似)科学講義」ということのようです。

初めて彼の文章を読む方はドキ、とされたかもしれませんが菊地氏はちょっときな臭いというか、かなり魅力的な言葉遣いをします。本章も口語体で成っているので、とても読みやすいと思います。

こちらは前半号で、9回分が収められています。

 

大学の1講義をまるまる紹介することはかないませんので 今回は第九回の「夢と輪郭線」を少し見てみます。

まず 視聴覚について器官的な偏差について触れています。「目は瞼を閉ざすことで視覚情報が遮断できるが、耳はそのようなパーツがないので常に何か音が入ってくる状態にある」、また、見ることについては、「基本的に何かに反射された光を見ており、光源自体を直接見ているわけではない(しかるに夜が来るたびにそれは定期的に見えなくなってしまう)」、聴くことについては、「耳が聴いているのは対象物の振動/運動そのものであり、また、それは睡眠中も途切れることなくわれわれの認識に反応を求めている」と、視覚と聴覚に質や想像力の違いがあることを説明しています。

そして、夢とは・・

「夢」とは、おそらく、このようなそもそも完全にはシンクロしていない視覚と聴覚のマリアージュ以前の状態を思い出すための時間であり、起きている時は視聴覚が統合された状態で保存されている「記憶」を、再びズレと揺らぎの世界にリリースすることで、その意味の連なりに修正を加える作業であり・・(本文より中略)

このように 夢とは感覚を再調律し、認識を変化させようとする試みである といいます。

「夢自体が視覚的作曲行為である。なので、夢にはBGMもOSTもない。2つの作曲を同時にできないのである。」(本文より)

こうした菊地の仮説は、現在あるまどろみや白昼夢を表現する音楽の特性から逆説的に説得力をもつようになるのですが、この部分についてはまた次の機会にします。

わたしは毎朝アラームの音で起きますが、その直後 夢世界が遠のいてゆく感覚がもどかしいです。思い出そうとしてもすぐ手の届かないところへいき現実味が失われてしまうのは 我々が夢とこちらの世界とで異なるダイヤルに再調律を繰り返しているから 仕方ないことなのだと思いました。

 

u_uノ zZZ

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