香川元太郎『日本の城――ワイド&パノラマ 鳥瞰・復元イラスト』(学研プラス、2018年)を紹介します

 戦国時代の城郭は、輝かしい戦績のあるものほど、現在はその姿を眺めることができないものが多いようです。戦国乱世を終わらせた徳川家康を苦しめた敵将の城として、あるいは明治維新のころに徳川方に加担したから、と様々な理由で破壊されてしまいがちです。とくに目立つ城ほど、そうした破壊の対象にされてしまうのですから、歴史小説やゲームの影響で、有名な城址に旅行へ行っても(期待の仕方が悪いとはいえ)あまり満足できなかったりします。

 その意味で、「城郭イラスト」という分野は、既存の歴史的建造物の修復が求められる昨今、その重要性が今後一層増していくでしょう。

香川元太郎『日本の城――ワイド&パノラマ 鳥瞰・復元イラスト』(学研プラス、2018年)

 その一例として、香川元太郎『日本の城――ワイド&パノラマ 鳥瞰・復元イラスト』(学研プラス、2018年)が挙げられます。城の攻防戦というと、がっちり守りを固めて籠城する守備軍に対し、どう攻めるかといった正面衝突の風景が思い浮かびます。しかし、城をめぐる攻防戦は劇的な戦いほど、そのありふれた景色を超えた展開をみせます。がっちり固めて、「水も漏らさん!」という籠城の構えに対し、水を入れられて落城寸前に追い込まれるといったことが起きるわけです。この場合で有名なのは、三国志の下邳城の戦い(198年)、樊城の戦い(219年)でしょうか。

 他方で、数では圧倒的に優位な攻撃方がやすやすと入城したら最後、閉所で一斉攻撃を受け、慌てて撤退した結果、堀や川に落とされる、という話もあります。そういう戦いとしては信濃(長野県)の上田城の戦い(第一次は1585年、第二次は1600年)が思い当たります。上田城を守るのは、旧武田の家臣・真田昌幸、攻めるのは旧武田領を狙う徳川家康といった構図で第一次上田城の戦いが起きました。二度目は関ケ原の戦いの地方ラウンドといった趣で、再度、真田対徳川の合戦となりました。

香川元太郎『日本の城――ワイド&パノラマ 鳥瞰・復元イラスト』(学研プラス、2018年)

 上記は、見事に徳川方が上田城に誘い込まれたシーンをイメージした絵です。その後の大騒ぎが想像されるところです。歴史、美術、建築それぞれの専門性を総合したジャンルである「城郭イラスト」の面白さに若干ふれたような気がしました。

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