リピーター様から「朝鮮鉄道旅行案内」や新編日本古典文学全集などいただきました📚
街を流れるクリスマスソングが私を苦しくさせます…。世界との接続不良が加速する今日この頃です(←教会へ行ってください)。
先日は練馬区のリピーター様のもとへ出張買取に伺いました。
そこで、次の書籍を買取させていただきました!
「朝鮮鉄道旅行案内」です。
奥付を見ると大正4年(1915年)再版発行となっています。編纂は朝鮮総督府鉄道局とのことです。
国立公文書館アジア歴史資料センター「アジ歴グロッサリー」の「朝鮮総督府」の記述によれば、朝鮮総督府は「1910年8月韓国併合に伴い、日本が朝鮮を統治するために設置した機関」とのことです。大正4年は1915年ですから、この本は韓国併合から5年後に発行されたものだとわかります。
冒頭を見ると、朝鮮総督府鉄道局で一千哩記念祝賀式(1915年10月)で配布されたものを、再版発売したと記述があります。朝鮮を旅行する人のための良いガイドブックになるはずだ、ということも書かれていますね。
少しのぞいてみます(引用に際して原則として新字体で記しましたが、同じ語句で新・旧両方の記載がある場合は、原文をそのまま引用しています)。
釜山駅の「沿革」部分を見ると、初めが
「後花園天皇、嘉吉二年(四百七十余年前)対馬と朝鮮との間に、通信条交の誼を結び、…(一頁)」
となっています。ちょっと面喰いました。釜山の沿革を述べるのに、その時代の日本の天皇の話から始めているのか…。日本の歴史の中での朝鮮という意識が、滲んでいる感じがします。
また、釜山の紹介の部分には
「釜山朝鮮の南端に位し、海路百二十余浬を隔てゝ下関と相対す。朝鮮縦貫鉄道の起点にして欧亜大陸に通ずる門戸たり。(2頁)」
とあります。「門戸」という言い方に、ユーラシア大陸への野心が垣間見える気がします。そしてそれを記述することにも躊躇いがないのですね。
他にもこのようなことが書いてありました。
「関釜連絡船は本駅端の埠頭桟橋に於て朝夕二回発著をなし、本鉄道の旅客列車と接続し、船車孰れも数歩を費やさずして乗降することを得るが故に出入極めて便利なり、此の聯絡船は専ら旅客を目的に、愉快に航海し得べき設備を施され、船中にては往復とも手荷物に対し、税関検査を受くる定めなり、此の検査は商品の外概して課税せらるゝことなきも、朝鮮より内地に向ふ際には、特に煙草に就き厳重なる検査を加へらる、又船中にては朝鮮銀行紙幣を無手数料にて日本紙幣と交換す。(2頁)」
このような記述は興味深いです。自分は初めて知りました。下関から船で釜山にも行けて、そこからすぐに鉄道にも乗れたということがわかります。船の写真もありました。なるほど、当時の人たちにとって、釜山が気軽な観光地であり得た理由も納得です。また、下関と釜山を結ぶ船の中で、税関検査はあったのですね。そして紙幣の交換もされていたということです。しかしながら、日本内地から朝鮮へという場合と、その逆とでは取扱いが異なる点も明記されています。この点は、日本の朝鮮統治について考える上で無視できない内容となります。
当時どういう手続きがあって移動されていたかは重要でしょうし、気軽なガイドブックに書いてあることも、大事な記録になり得るのかもしれないと、感じました。
他、「旅館」の部分を見ると、
「停車場旅館。本鉄道の直営に係る当駅階上の停車場旅館は、洋式ホテルにして、客室其他設備整頓し好評を博し居れり。(3頁)」
とありました。駅上にホテルがあるなんて、かなり大きな駅だったのだなあと少し驚きました。そしてそれは鉄道の直営というのも、面白く思いました。
写真もあったので見てみると、なるほど立派な駅です。
自分は歴史に全く明るくないのですが、この本を見るなら、きっと教科書ではわからないことを知ることができるのだろうという予感がしました。一般の観光客向けのガイドブックにこそ、表れる朝鮮への意識もあるはずです。そして、どのような意識を観光客に持たせようとしたのかも、この本を覗いてみると、わかりそうです。
貴重な本をお譲りいただきました。
なお、絵はがきと外地旅行の関連で、過去に投稿したものがございます。さきほど、「どのような意識を観光客に持たせようとしたのか」と問いましたが、そのことに関して若干ながら手がかりになる内容なのではと考えています。とりあえずは、昭和戦前期、とくに1930年代半ばの日本で、外地の朝鮮や満州への旅行が盛んであった事実をもとに、そうした旅行先に選ばれた日清・日露戦争の戦勝記念史跡に注目しています。「その4」の冒頭に、それ以前の投稿のリンクをまとめてあります。下記のリンクよりご覧いただけますと幸いです。
※日露戦争を記念した写真帖、絵葉書などをお譲りいただきました!~その4(結)日露戦争を偲んで「金州駅ヨリ南山ヲ望ム」(くまねこ堂骨董ブログ、2020年5月9日)
https://www.kumaneko-antique.com/16074/
今回は、その他にも、新編日本古典文学全集、新釈漢文大系、川端康成全集、岩波書店の新古典文学大系などの全集もたくさんいただいております。
まだまだたくさんの本があるとのことで、再訪の予定です。大変ありがとうございます。
くまねこ堂では、古本やDVD/CDの他にも、古道具や骨董品、アクセサリー、切手、万年筆、レコードや古いおもちゃなどなど、様々なお品物の買取も行っております。
ご処分をお考えの方、またご整理などでお困りのお客さまは、是非くまねこ堂までお申しつけ下さいませ。いろいろなご提案ができるかもしれません。
お電話またはメールフォーム、LINEにて、まずはお気軽にお問い合わせ下さい!スタッフ一同心よりお待ちしております!
コトー
参考
国立公文書館アジア歴史資料センター「アジ歴グロッサリー」「朝鮮総督府」
https://www.jacar.go.jp/glossary/term2/0050-0020-0020.html
買取品目・ジャンル | リピーター様・新編日本古典文学全集・新釈漢文大系・川端康成全集・岩波書店・新古典文学大系 |
---|---|
商品名・作品名 | 「朝鮮鉄道旅行案内」(朝鮮総督府鉄道局編纂) |
出張先・エリア | 東京都練馬区 |
お問合わせ・買取のご依頼
お問合わせ・ご相談は無料です。お気軽にお問合せ下さい。