『ボルジヤ家罪悪史〈世界猟奇全集 第五巻 〉』（ヂューマ著,横溝正史訳,昭和6年,平凡社）のご紹介です
今回は、先日買い取りをさせていただいた古書から『世界猟奇全集』のご紹介をさせていただきます。
この全集は昭和5～7年（1930～32）にかけて平凡社から刊行されたシリーズ（叢書）です。いわゆる*円本で、12巻のうちなんと5冊が発禁処分を受けたそうです。こちらの『巴里のどん底〈世界猟奇全集 第四巻〉』に関しては、驚くべきことに、出版と同時に発禁処分になりました。
『ボルジヤ家罪悪史〈世界猟奇全集 第五巻 〉』『巴里のどん底〈世界猟奇全集 第四巻〉』
*円本…1冊1円の全集類の俗称。「庶民の読書欲にこたえ、日本の出版能力を整えただけでなく、執筆者立ちをうるおした。」そうです。当時の1円は大学初任給の約2%と（現在の5千円くらいでしょうか）十分高く感じられますが、これが廉価と謳われるほどに当時の本は高価だったそう。
『巴里のどん底〈世界猟奇全集 第四巻〉』
こちら前書きにある通り原題は「娼婦と過ごした一ヵ月」といいます。
花の都の巴里にで働く娼婦たちについて「つぶさにその実情を調査した、その結果報告」とあります。
『ボルジヤ家罪悪史〈世界猟奇全集 第五巻 〉』（ヂューマ著,横溝正史訳,昭和6年,平凡社）
こちらは「小説というよりは歴史書」に近いものだそうです。15～16世紀頃に「位人臣を極めた（最高地位についた）ボルジヤ一家の罪悪」が分明と分かり、「同時に当時の宗教が如何に幼稚」で「貴族階級が、如何に横柄であったか一読痛憤の念を禁じ得ない」とあります。
いずれも発禁になった理由がよく分かる気がします。
『ボルジヤ家罪悪史〈世界猟奇全集 第五巻 〉』（ヂューマ著,横溝正史訳,昭和6年,平凡社）
訳者はかの横溝正史氏で、彼による序文にて「罪悪という言葉も。一私人的な罪ではなく、もっと大きく国家と国家との罪悪―そういったものを意味しているのである。」と結んでいるのが、なんだか訳者として頼もしく、彼自身にも通底した興味があったのではないかと思われます。
『ボルジヤ家罪悪史〈世界猟奇全集 第五巻 〉』（ヂューマ著,横溝正史訳,昭和6年,平凡社）
最後に月報にこんなものが載っていました。少し面白かったので写真だけ挙げておきます。
以上、古書買取品の『世界猟奇全集』のご紹介でした。戦前の古書・資料は状態が悪いことが当たり前です。どうか汚いからと捨ててしまわず、当店にお見せください！こちらは見ての通り函欠で、ヤケをはじめ状態が悪く見えるかもしれません。しかし、正直今まで取り扱った他の古書と比べると、我々の感覚では全然悪いとは言えない状態でございます。「捨ててしまうようなものこそ珍しい」ということがありますので、直接査定が可能な出張買取のご依頼をいただければと存じます。
くまねこ堂では、古本やDVD/CDの他にも、古道具や骨董品、アクセサリー、切手、万年筆、レコードや古いおもちゃなどなど、様々なお品物の買取も行っております。
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小野
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