買取事例

「永遠の都 ローマ展」のご紹介 #ローマ展 #東京都美術館

本日もくまねこ堂ブログをご覧いただきありがとうございます。

 

今回は東京都美術館で行われる『永遠の都 ローマ展』(2023.9.16~12.10)をご紹介いたします。

この度の展示はローマに建つカピトリーノ美術館のコレクションを中心に、建国から近代までの作品を通してローマの文化と芸術を紹介するものです。

カピトリーノ美術館は聖地とされるカピトリーノの丘に建つ美術館です。

この地は、かつては神殿が立ち並び、16世紀にはミケランジェロ設計の広場が整えられるなどローマを象徴する場所の1つと言えるでしょう。

1471年に当時の教皇シクストゥス4世が4点の彫刻を寄贈したところからこの美術館の歴史はスタートし、その後も彫刻や絵画・古代の遺物などが集められ今日では世界でも指折りのコレクションを誇る美術館となりました。

そのコレクションを堪能できる貴重な機会が本展です。

私が気になっている展示をいくつかご紹介しようと思います。

《カピトリーノの牝狼》(複製)

ロムルスとレムスの双子に乳を与える狼の彫像です。

神の子である双子の兄ロムルスは王政ローマの建国者として知られています。

この像はローマ市庁舎に収蔵されており、神話の世界から地続きで存在する都市であるローマの魅力が色濃く表れた作品です。

 

《コンスタンティヌス帝の巨像》

本展では一部を原寸大で複製し展示するようです。

古代の権力者はデカい墓を建てさせたりデカい像を彫らせたり…何と言いますか、「力 is パワー」という単純さから生まれた作品が私は結構好きだったりします。

複製ではありますが、ヨーロッパの彫刻の魅力である重厚さを存分に味わえる作品であると思います。

 

イッポリート・カッフィ《フォロ・ロマーノ》

「フォロ・ロマーノ」は古代ローマ時代の遺跡を指します。

この作品は存じ上げなかったのですが、美しい場所なんだなという雰囲気が伝わってきました。

構図の重厚さや影の落ち方に洋画の良さが発揮されており、これは直に見たいと思いましたね。

 

本展にお越しの際は開室日等を公式HPでご確認の上お越しくださいませ。

公式HP: https://roma2023-24.jp/

公式X(Twitter): @roma2023_24

 

 

くまねこ堂では古書骨董はもちろん美術品、図録、楽譜、CD・DVD、ゲーム、おもちゃ、切手、古銭、万年筆など様々なジャンルの品物を同時に査定することができます。

ご整理にお困りのお客様は是非一度お電話やLINE、メールにてお気軽にご連絡くださいませ。

スタッフ一同ご依頼を心よりお待ちしております。

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

トリ

 

 

 

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江戸川区出張買取+古本無料回収サービス(9月15日まで)のお知らせ📚

くまねこ堂から
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期間:2023年9月15日(金)まで受付します。

江戸川区在住の方で、本のご処分にお困りの方、ご検討ください。
江戸川区であれば、出張買取に伺うと共に、ご不要となりました書籍を無料で回収いたします。回収は、百科事典・文学全集も大丈夫です。

回収日時の指定は基本的にお受けしておりません。
その他、事前に確認したいことがございますので、以下の当店フリーダイヤルにご連絡の上、ご相談くださいませ。

ご連絡はこちらへ【0120-54-4892】📞

以上お知らせです。ご連絡をお待ちしております。
どうぞよろしくお願いいたします。

コトー

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江東区出張買取+古本無料回収サービス(9月15日まで)のお知らせ📚

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新宿区にて昭和の映画パンフをお譲りいただきました

 

先日は東京都新宿区へ出張買取に伺いました。

骨董ブログの方もお読みいただけると嬉しいです。

東京都新宿区へ出張買取に伺いました(2023年,くまねこ堂ブログ)

こちらのお宅には解体前に骨董品の査定をして欲しいとのことでお呼びいただきました。骨董の他にも古書関係ですと、昭和の映画パンフレット・漫画・学習参考書などをお譲りいただきましたのでそちらをご紹介させていただきます。

キングコングの逆襲 他 東宝映画パンフレット

その前に・・・

くまねこ堂では大手の買取業者様を呼んでいただいた後からでも、出張買取に伺います!

普通の買取業者様ですと対応できない、他の業者様が残していかれたお品物の査定も、様々なジャンルにお値段のご提案が可能な当店ですと、対応できる可能性がございます。

今回につきましても骨董の他に、思いもかけない物に値段がついて驚かれていらっしゃいました。一度買取業者様をお呼びになった後でも、どうぞお気軽にお電話、LINEなどでご相談ください!

わんぱく王子の大蛇退治 他 映画パンフレット

「わんぱく王子の大蛇退治」は東映の色彩長篇漫画、今でいうところのアニメ映画でしょうか。またメインどころはやはり東宝特撮ものです。円谷英二、本多猪四郎作品ですね。見開きにはにはマルサンの広告などもありました。
このような当時物のパンフレットの他には、キングコミックス、ヒットコミックス、虫コミックスなどの昭和の漫画もお譲りいただきました。

様々なお品物をお譲りいただきありがとうございました!

🌕

くまねこ堂では、古本やDVD/CDの他にも、古道具や骨董品、アクセサリー、切手、万年筆、レコードや古いおもちゃなどなど、様々なお品物の買取も行っております。
ご処分をお考えの方、またご整理などでお困りのお客さまは、是非くまねこ堂までお申しつけ下さいませ。いろいろなご提案ができるかもしれません。
お電話またはメールフォーム、LINEにて、まずはお気軽にお問い合わせ下さい!スタッフ一同心よりお待ちしております!

オノ

 

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アフロ・ディズニー/菊地成孔・大谷能生(文藝春秋)

こんにちは 皆さま いかがお過ごしでしょうか。
昨日電車で風船を3つ掲げている人を見ました テーマパークらしいものではなく普通の原色の風船です。見たと言っても車窓に反射して写っているものを眺めていただけなので、それは映像のように思いました。最寄り駅のアナウンスで現実に引き戻されて 降りるとき私を押しのけるようにして横切る人がいました。その人はカレーを小さいポリ袋にいれて頭の上にのせていました。カレーがタプタプとしているのを見て風船男が確かにいたのだと実感が湧いてきました。

さて 暑いですが、今日も入荷した本を紹介します。

「アフロ・ディズニー/菊地成孔・大谷能生(文藝春秋)」です。

菊地と大谷がうけもっていた慶應義塾大学での講義の講義録です。今はもうやっていないようですが、当時は慶應だけでなく東京大学や国立音楽大学でも講義があったようです。

敢えてタイトルに内容を謳わなかったので、前書きだけ読んで先に進もうか判断するタイプの方にサーヴィスするが、この本は映画の講義録でも、オタク論の講義録でも、黒人音楽の講義録でもない(「オタク=黒人」というみたては一瞬出てくる)。だったら帯にでも書いておけよという話なのだが、この本が情報として紹介される場合、「視聴覚の分断/再統合という現象と発達学を結びつけ、20世紀を俯瞰する。という構えで行われた、軽狂の人文(疑似)科学講義」という事にでも成るかも知れない。(本文より)

どういった講義であったのか、菊地の前書を引用すると「視聴覚の分断/再統合という現象と発達学を結びつけ、20世紀を俯瞰する。という構えで行われた、軽狂の人文(疑似)科学講義」ということのようです。

初めて彼の文章を読む方はドキ、とされたかもしれませんが菊地氏はちょっときな臭いというか、かなり魅力的な言葉遣いをします。本章も口語体で成っているので、とても読みやすいと思います。

こちらは前半号で、9回分が収められています。

 

大学の1講義をまるまる紹介することはかないませんので 今回は第九回の「夢と輪郭線」を少し見てみます。

まず 視聴覚について器官的な偏差について触れています。「目は瞼を閉ざすことで視覚情報が遮断できるが、耳はそのようなパーツがないので常に何か音が入ってくる状態にある」、また、見ることについては、「基本的に何かに反射された光を見ており、光源自体を直接見ているわけではない(しかるに夜が来るたびにそれは定期的に見えなくなってしまう)」、聴くことについては、「耳が聴いているのは対象物の振動/運動そのものであり、また、それは睡眠中も途切れることなくわれわれの認識に反応を求めている」と、視覚と聴覚に質や想像力の違いがあることを説明しています。

そして、夢とは・・

「夢」とは、おそらく、このようなそもそも完全にはシンクロしていない視覚と聴覚のマリアージュ以前の状態を思い出すための時間であり、起きている時は視聴覚が統合された状態で保存されている「記憶」を、再びズレと揺らぎの世界にリリースすることで、その意味の連なりに修正を加える作業であり・・(本文より中略)

このように 夢とは感覚を再調律し、認識を変化させようとする試みである といいます。

「夢自体が視覚的作曲行為である。なので、夢にはBGMもOSTもない。2つの作曲を同時にできないのである。」(本文より)

こうした菊地の仮説は、現在あるまどろみや白昼夢を表現する音楽の特性から逆説的に説得力をもつようになるのですが、この部分についてはまた次の機会にします。

わたしは毎朝アラームの音で起きますが、その直後 夢世界が遠のいてゆく感覚がもどかしいです。思い出そうとしてもすぐ手の届かないところへいき現実味が失われてしまうのは 我々が夢とこちらの世界とで異なるダイヤルに再調律を繰り返しているから 仕方ないことなのだと思いました。

 

u_uノ zZZ

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吉川光治『徳川封建経済の貨幣的機構』(法政大学出版局、1992年)を紹介します

 いつもくまねこ堂ブログをご覧いただきありがとうございます。

 くまねこ堂では、古銭の取り扱いをしています。その関連で、最近目にした本を紹介したいと思います。

吉川光治『徳川封建経済の貨幣的機構』(法政大学出版局、1992年

 吉川光治『徳川封建経済の貨幣的機構』(法政大学出版局、1992年)です。同書刊行時の奥付によりますと、著者の吉川氏は、青山学院大学経済学部教授で、前著は『イギリス金本位制の歴史と理論』(勁草書房、1970)と、日本史の専門家ではなく経済学者であることがわかります。たしかに、貨幣研究は、狭い意味での歴史研究の手法では扱いきれず、経済の専門家の知見が求められることがあります。同書冒頭でも、イギリスの経済学者J・M・ケインズの『一般理論』(『雇用・利子および貨幣の一般理論』、1936年)への言及から始まるなど、一般に想像される江戸時代研究の書籍とは異なった導入となっています。

 ところで貨幣、お金とは何でしょうか。お金とは何か、といきなり質問されたら、どう答えればよいのでしょうか。たとえば、金属のお金よりも紙切れのお金ほうが価値が大きいのはなぜでしょうか。

 とりあえずは、お金はそれ自体で価値があるものではなく、みんなが認めている仕組みの中で取引されているから価値がある、と考えておきましょう。

 そうなると、みんなが認めるお金の仕組みは、天地創造から現在まで不変だったのでしょうか。そうではないだろう、と気づくのは容易です。何もお金の歴史に詳しくなくとも、日本のお金の場合、江戸時代の単位は「両」で、明治維新後に「円」という単位に変わったというのは周知のことです。比較の仕方にもよりますが、お金の常識は、時代や場所によって大きく違うのです(もちろん、微差が重大な違いを生む場合もあります)。

 ケインズの経済学は、紙幣、お札が金(ゴールド)と交換可能だ、というお約束の下でお金の価値が保証されていた当時の常識に異を唱えるものでした。経済学の最良の部分には、こうした「みんながそうだと思っている」、だれも疑わない常識に盾突く力があります。その意味で、『イギリス金本位制の歴史と理論』の著者でイギリス経済が専門の吉川氏が、日本の江戸時代の経済、とくに貨幣制度についての研究をまとめられたのは、大変興味深いことです。

 近年の日本経済に関する議論でも、今後の経済制度や社会の仕組みを考えるにあたって、江戸時代の相互扶助の歴史(たとえば、頼母子講など)が注目されています(※)。

(※)一例として、広井良典『人口減少社会のデザイン』(東洋経済新報社、2019年)。

 歴史学と経済学、日本史と世界史の交点に位置づけ得る貨幣研究の可能性は、今日一層高まっています。古銭を眺めながら、貨幣研究の一端を紹介しようと考え、今回の投稿となりました。引き続き、この分野について勉強していきたいと思っています。

小野坂

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渋谷区広尾に買取出張で伺いました。

渋谷区広尾に買取出張で伺いました。
呪術廻戦、チェンソーマン、ハイキュー、もやしもん、ブルーロックなどのコミックセットをいただきました。ありがとうございます。

普段は電車でしか行かない渋谷に車で行くのは、いつもと景色が違って見えて新鮮でした。特に広尾は高級車ばかりが目にとまり、運転しながらわくわくしました。ポルシェ、ポルシェ、ランボルギーニ、ベンツ、、、とついきょろきょろしてしまいました。

最近はの車はアールの効いたデザインのものが主流で多く見かけます。個人的には昔のカクカクとした無骨なデザインの車の方が粗削りな感じがして好みなのですが、あれらは今の形よりも安全性が低いそうです。
機能面や安全性を保った上でかっこいい形をデザインするのは簡単なことではないと思います。
試行錯誤を重ねて今の形になったと思うと、感慨深いです。

もっと初歩的なことですが、正しい形のものをつくることができることにも感心してしまいます。
正面の向きの物体が横を向いたときにどのような形になるか私には見当もつきません。きっと狂っている間違った形の物体をつくってしまいます。

漫画もそうです。こまによって向きや角度が違っても同じものの絵だとわかります。
バトルシーンなどで、形や構図がぐちゃぐちゃしていても誰が何をしているのかある程度認識できますし、チェンソーマンなんかも今までに見たことが無い奇妙な生き物なのに、絵が破綻していなく形を理解できます。初めて見た時、人間の首にチェンソーが生えるとこういう形の生き物になるのかと驚きました。

以前、絵を描く友人にデッサンを教えてもらったことがあるのですが、私の絵は全てが狂っていると優しく指摘されました。この角度から見たらこういう形にはならない。光の照り返しがあるから端はこんなに暗くないはずだ。と全てを直されました。
きっと、彼らと私とでは見えている世界とその解像度がちがうのだと思います。

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巧みな物語を味わう―シオドア・スタージョン『影よ、影よ、影の国』ご紹介―

自分の頭の中では、8月31日までが夏休みだと思っていたのに、最近はそれより前に新学期が始まってしまうらしいですね。8月31日の情緒はどこへ…。

まだ夏休みの方はゆっくり読書ができる時間もあるでしょうか。今日はこちらの書籍を紹介したいと思います。シオドア・スタージョン『影よ、影よ、影の国』(村上実子訳・朝日ソノラマ文庫・昭和59年)です。短編集になります。

朝日ソノラマ シオドア・スタージョン

こちらを自分はとあるカフェバーで読みました。シオドア・スタージョンが好きな店主が、たくさんSFを置いている店です。飲みながら、くつろぎ空間で読書をするのはなかなかよいです。
自分はそこでは表題作「影よ、影よ、影の国」を読んだだけでしたが、この作家の魅力をなかなかに感じました。シオドア・スタージョン、自分はそのカフェバーで読んだのが初めてでした。素敵な出会いでした。

表題作「影よ、影よ、影の国」は、義母に「悪い子」だとされて罰として玩具を取り上げられ、自室に閉じ込められた少年が、影絵で遊んでいるお話です。無垢な心の残酷を感じる物語です。
その怖さの一因には、主人公の少年の視点で物語が進んでいくことが挙げられます。こういう記述が巧みなのです。

例えばこの物語での義母についての記述を見てみましょう。以下における「彼女」が義母です。

「どうしてまだベッドに入ってないの」彼女は両手を打ち合わせた。それは棒を折るような、乾いた音をたてた。びっくりしたボビーはベッドに飛び込み、あごまでシーツを引き上げた。前にはそういう事をすると、温かい頬とやさしい声をした人が来てくれたものだったが、それももうだいぶ昔のことになってしまった。(10ページ)

「温かい頬とやさしい声をした人」はボビー少年の生母でしょう。彼は本当の母親を懐かしがっています。ボビーは彼女に愛されていた実感があった。しかし、その生母がいなくなってやってきた新しい母親は、「棒」とか「乾いた」という表現とともに形容されています。ここからは、彼が義母を嫌っていることがよく伝わります。少年が義母に魅力ややさしさを感じていないことを、直接に述べずに、生母の記憶や彼女の姿形の記述で示すこと、上手いです。

食事の場面での記述も技を感じました。以下はボビーが義母の出すオートミールを食べているところです。

彼は茶かっ色のドロドロの中に、柄まで埋まっているスプーンをみつけて、食べ始めた。それには砂糖が全然かかっていなかった。
「たぶん、おまえ、あたしにお砂糖を少し持って来て欲しいんじゃない?」少したってから彼女がいった。
「ううん、いらない」それは本当だったが、ボビーはなぜグエンママが、ひどく怒った顔をして、やがてがっかりしたように見えたのだろうと不思議に思った。(17ページ)

「茶かっ色のドロドロ」「柄まで埋まっているスプーン」という言い方には、それを提供する義母への嫌悪が感じられます。義母はそれを意識していないのかもしれないですが、ボビー少年から見た世界だけが記述されることで、義母はとても意地悪な人になっています。続けて、砂糖をいらないと言ったボビーに対して、義母は怒り、がっかりしたとありますが、ここもボビー少年の目線での記述であるので、それは「不思議」だという帰着をしています。読者は、義母の義理の息子への複雑な心情を察することができますが、物語はボビーの視点からのものなのでそのような配慮の記述はありません。義母は冷たくていじめてくる悪い人であるとして物語から断罪され、一切救われないのです。そこが物語に、残酷さを纏わせています。

以下でも、義母として揺れる彼女の切実な言葉は、少年によって理解不能なものとして処理されています。彼女は罰を受けさせた少年がけろりとしているので次のように怒ります。

「いったいどうなってるのよ。おまえは怖いってこともわからないほどまぬけなの?あたしに、下へ行かせてくれって頼むことも思いつかないほどまぬけなの?泣くことも出来ないほどまぬけなの?おまえ、なぜ泣かないの?」
ボビーは丸い目を見開いて、グエンママをみつめた。
「ぼくがお願いしても、下に行かせてくれなかったでしょ。だからぼく、お願いしなかったの」ボビーはオートミールを少しすくった。「ぼく、泣きたくなかったんだ、グエンママ。悲しくなかったんだもん」
「おまえは悪い子で、罰を受けているのだから、悲しいはずなの!」彼女はひどく怒っていった。彼女はそのかたいまっすぐな手で、憎らしげにスイッチをたたいて灯を消し、ドアをピシャッと閉めて出て行った。(18ページ)

義母は、自分が少年に影響を与え、その泣かせたり悲しくさせたりできるのだと実感することで、家での自分の存在を確かめたかったのでしょう。彼女には、新しくできた家族に、自分を大切にしてほしいという思いがあるのでしょう。しかし、少年をいじめても、彼は思ったような反応を示さない。だから少年にもっと意地悪をする。その連鎖に、彼女は苦しんでいる。自分の存在が軽んじられているようで。そんなことを読者は、この彼女の叫びから感じ取るはずです。
しかし、やはりこの物語はボビーの視点からのものであるので、その彼女の苦悩を掘っていくことはありません。彼女は「かたいまっすぐな手」しか持たない魅力のない人で、「憎らしげ」「ドアをピシャッと」と形容されて、悪い人の役割を負い続けます。

このブログでは物語の結末には触れませんが、終わりも同様に、少年目線の物語であることの残酷がよくわかるものとなっています。義母が苦しんでいることはその発言で読者にわかるようにしながら、物語としては少年のもので、彼女の苦悩に無知のまま、彼女に悪役を任せ罰を与えていくような記述です。上手だなあ、物語だなあという感動があります。とても短い作品でありながら、満足感がありました。

この文庫『影よ、影よ、影の国』には、シオドア・スタージョンの他の短編も収録されています。そちらも読んでみたくなりました。
巧みな物語、皆さまも夏の終わりに味わってみるのはいかがでしょうか。

本日はシオドア・スタージョン『影よ、影よ、影の国』(村上実子訳・朝日ソノラマ文庫・昭和59年)をご紹介しました。

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「生誕120年棟方志功展 メイキングオブムナカタ」のお知らせです

本日は展覧会のお知らせです。

「生誕120年棟方志功展 メイキングオブムナカタ」
会期は10月6日から12月3日東京国立近代美術館にて開催されます。

棟方志功は板画(自作木版画の呼称)、倭画(自作肉筆画の呼称)、油画といった様々な領域を横断しながら、本の装丁や挿絵、包装紙などの商業デザイン、映画・テレビ・ラジオの出演など、その活動は多岐にわたります。

棟方志功とはいかなる芸術家であったのか。本展覧会では、拳サイズの絵葉書から、公共の建築空間の大壁画まで、「版画」の可能性を広げ、様々なメディアを通じて「世界のムナカタ」が社会現象となるまでの道程「メイキング・オブ・ムナカタ」を辿る大回顧展です。

棟方氏は、青森・東京・富山を創作の拠点としたそうで、今回の展示はこの3地域を辿るような構成となっています。

縦3メートルの巨大な屏風作品「幾利壽當頌耶蘇十二使徒屏風」が60年ぶりに展示されるそうです!他にも、ほとんど寺外で公開されることのなかった倭画の名作《華厳松》(躅飛山光徳寺蔵)が通常非公開の裏面とあわせて展示されるなど、大回顧展として盛りだくさんの内容となっています。

 

わたしは初めて作品を知りましたが、版画の境目が滑らかで、輪郭で形を捉えていないことに気づき、新鮮な感覚でした。ぜひ現地で鑑賞したいと思います。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「生誕120年棟方志功展 メイキングオブムナカタ」

場所:国立近代美術館

会期:10月6日ー12月3日(休館日:月曜日、ただし10月9日は開館、10月10日)

開館時間:午前10時ー午後5時(金曜土曜は午後8時まで開館)

問い合わせ先:050-5541-5600

展示会サイト:生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ – 東京国立近代美術館 (momat.go.jp)

 

本日もお読みいただきありがとうございました。

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「学研まんが ひみつシリーズ」の旧・新版について

 いつもくまねこ堂ブログをご覧いただきありがとうございます。

 学習用のマンガは、科学や人権意識の発展にしたがって、内容が更新されることがあります。今回はそのような例として、以下の学習漫画を紹介します。

学研まんが

「学研まんが ひみつシリーズ」の第19巻にあたる、『できるできないのひみつ』です。同書は身近な自然現象について、たとえば「人間は、鳥のように飛ぶことができるか」どうか、という切り口で解説しています。

 ところで、現行版の冒頭の注記には、下記のものがございます。該当のページをスライド化しています。

学研まんが

 基本的には、「作品に描かれている時代背景を考慮し、当時のまま」としているとのことです。それでも、完全に当時のままではなく、削除された箇所もあります。それが上掲画像右のキャラクター紹介のページ、「デキッコナイス」の部分です。次に、1976年発行の旧版の同じページを示します。

学研まんが

 ある表現が削除されていることがわかります。今日からみれば明らかに問題のある表現ですが、先に掲げた現行版の注記とあわせると、改版にあたっての校正者の苦衷が偲ばれます。単に自然科学の教科の参考書というだけでなく、教育の歴史の一側面として、今回の削除箇所をめぐる事情に注目しました。このような形で、古めかしい学習マンガが、今日的な課題との関連で重要な資料となる場合があります。子どもたちのためによりよいテキストを作ろうとしてきたなかでの出来事として直視べきことだと考え、こうして紹介しています。現在の私たちも、未来の目線に耐え得るだろうかと問われているのではないか、著者を今日の視点で断罪して済む問題だろうか、との思いでこうして取り上げました。

小野坂

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くまねこ堂 古本出張買取対応エリア

東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城を中心に承っております。詳しくは対応エリアをご確認ください。

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